・+ 薔薇、紅茶、或いは花園 +・

差し伸べる手は空を薙ぎ 掌の上に冴え冴えと月
花園に佇む蕾たちは 密やかな声で僕を嘲った

どうしても君を抱きしめたいんだ
(どこからかダージリンの香りがする)
どうしても君に伝えたいんだ
(蜂蜜を混ぜるマドラーの音がする)

白い褥に横たわり 色の消え失せたその頬に
どうして偽りの紅なんか差して 君は僕を騙すんだ

たとえ君が息絶えて 物言わぬ骸に成り果てたって
僕は君を愛しているんだ だからその窓を開けておくれよ

たとえ君が息絶えて 明日には墓石の下に眠るとしても
僕の想いは眠りやしない だからどうか傍にいさせて

もしも君が土に還るなら 僕はそこに薔薇を植えよう
咲き誇る花はきっと 在りし日の君のように美しいだろう

死が君を拐おうとして もうすぐ黒塗りの馬車でやってくる
色の消え失せた唇に どうして君は紅なんか差して
微笑みながら迎えようとするんだ

せめて最期は傍にいさせて
(頑なに窓は開かない)
愛していると告げさせてくれ
(小さく咳き込む声が聞こえる)

どんな姿の君でも愛すよ 見ないでなんて言わないでくれ

もしも君が土に還るなら 僕はそこに薔薇を植えよう
咲き誇る花はきっと 在りし日の君のように美しいだろう

もしも君が土に還るなら 僕はそこに薔薇を植えよう
どんなに棘に傷つけられても 僕は君を離すものか

差し伸べる手は空を薙ぎ 掌の上に冴え冴えと月
花園に佇む蕾たちは 気の毒そうに僕を嗤った







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