・+ ゴモリーの孤独 +・

疚しさよ育て 彼の心に 私を独り置き去りにして
虚しさよ満たせ 私の胸を 彼に代われる贄など居ない

寂しさよ募れ 彼の心に そして旅路を引き返させよ
魔力よ宿れ 我が唇に 彼を呼び戻す呪文を唱えよ

白い死体の山を踏み分け 新しい血を杯に注ぎ
幾つも重なる封印の奥 あどけない少女の姿で嗤う

天を衝く塔の地下深く 恋に狂える悪魔が独り

世界は平然と時を刻み 門柱は崩れ 鉄扉は軋み
それでも彼は戻ってこない 私の心を封印したまま

幼い贄の少年達が 怯えの瞳で私を見つめる
さあ跪き頭を垂れよ 運命を憂い涙を零せ
無駄な悪魔の食事となるを 自ら望んだわけではあるまい
どんなに贄を喰らえども もはや魔力は戻らぬのだから

こうして 人を喰い続ければ
いつか戻ってきてくれるだろうか
天を衝く塔の地下深く その手で再び悪魔を弊しに

“なぜ殺してくれなかった
いっそ殺してくれればよかった
お前に恋などしてしまうなら”

深き螺旋の底まで降りて 銀の剣を振り上げておいて
奪われたのは命ではなく 私の心と血塗れの唇

ああ なんと 愛しき憎き騎士
その長い指 漆黒の髪 太陽の光が宿りし双眸
白き喉笛を噛み裂いたなら その血はどんなに紅いのだろう

あの時 お前が欲したならば
この魂など手放してもよかったのに

この苦しみが罰だと言うなら
神とは悪魔より残酷なものに違いない
永遠という名の牢獄 灼熱の恋が我が身を焦がす

罪悪感よ襲え 彼の心に 悲しき悪魔を思い出させよ
奇跡よ集え 私の身体に 老いさらばえて死に逝けるように

贄を積んだ荷馬車を曳いた 黒い牝馬の嘶きが響く
瓦礫に埋もれた鉄扉が開き 晩餐の支度が整えられる
今宵の皿の上にもきっと 彼の代わりは居ないのだろう

朽ち果てた塔の地下深く 恋に狂える悪魔が独り









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