・+ 黒鳥の君 +・

詩人は謳う 戦火の国に皇子あり その名をcygnus 齢は二十四

静かな眼差しに宿るのは 不屈の闘志と強き意志
鋼鉄の心臓を積んだ白馬を操りて 風の如くに戦場を駆ける

黒衣を纏うその姿 恐ろしくも麗しき黒鳥の君
冷たい微笑のその下に 熱く滾るは心の焔

草原を踏みしめる軍馬の嘶き 整然と並ぶ騎馬隊 高く掲げるclaymore

相対するは敵国の将は 勇敢なりしと噂に名高き戦姫 異国の花の名を持つ娘
戦の発端を開いた父は既に亡く 国を憂いて先陣に立つ その姿はかくも儚き

戦乱の前の一瞬の静謐 遠く視線が交差する 争いの火蓋は切って落とされた

響く剣戟の隙間を縫って 戦姫のrapierが陣へと迫る
冷笑を持って迎えた彼の心の奥に その時去来した感情は如何なるものであったろう

かの切っ先は届くことなく 戦姫は破れ 皇子の前へと引き出される
取り押さえられてもなお輝きを失わぬその瞳 皇子は皮肉に唇を歪め 恭しく腰を折った

「ようこそ、姫君」

屈辱と怒りに頬を紅く染め 顔を背けた姫の傍らに膝をついて その顎を掴んだ彼は ひどく優しげに言葉を紡ぐ

「私は争いを好まぬ。すでに決着はついた、兵を退いてはくれぬか」

驚きに言葉を失う戦姫 その唇を奪って囁いた言葉は 他の誰にも届かなかった 
かくて忌まわしき戦禍は去り 春の訪れと共に歴史は巡る

冷酷と名高きかの皇子は やがて寛大にして偉大なる王として後の書物に名を残す
その傍らに寄り添ったのは 咲き誇る極彩の花のような 美しい妃であったという

詩人は謳う かつて戦火の国に皇子あり その名をcygnus 齢は二十四 

今は心優しき王君 流血の贖いを嫌い 異国の花を愛した

詩人は謳う 戦火は消え 燈火となりて 永く平和な時代を赫した

謳い継がれる物語 その真偽は 今は風だけが知っている









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